フェアスタート実績

やってみたら、案外楽しい。ポジティブに考えればなんでもポジティブになる。

小野さん写真

小野早さん

児童養護施設で高校卒業まで暮らし、現在は動物病院に勤める小野早さん。仕事も2年目に入り忙しいながら、バスケ部のマネージャーとして培ったコミュニケーション力とその笑顔で、日々、お客さんと接しています。就職するまで在籍していた施設での生活や高校での経験について話していただきました。

取材・文・写真=矢嶋桃子

 

●動物と接することが好き

 

――動物病院で、小野さんはどんなお仕事をしているのですか?

 受付と、院長先生の補助的な仕事です。まだミスも多いけど、常連の方たちと顔見知りになってきて、最近は「慣れてきたね」と言われます。

 

――もともと動物は好きなのですか?

 好きです。だから自分からふれあいたくて近づくんですけど、しつこいからか動物には嫌われるんです。道端の犬にも好かれないし、ネコには怒られてひっかかれるし(笑)。でもそれも楽しいし、怒っている姿もかわいいと思ってます。

 

――仕事の時間は?

 朝8時前には出勤して、午前中の営業時間は9時から12時まで。それから休憩や手術をはさんで、午後はまた16時から20時まで開けます。休みは日曜日と祝日なので、基本的には週1日ですが、患者さんがいなければ19時には上がらせてもらっています。

 

――今の職場はどうやって決まったのですか?

 児童養護施設の職員さんがフェアスタートの求人紹介会に行って、自分に合いそうな求人を4つぐらい持ってきてくれました。ここ以外に、看護師、スーパー、宝石屋さんがあったと思います。だけど最初は大学に行きたかったので就職する気がなくて、この動物病院の話も断ってたんです。

 

●憧れの仕事はあったけれどやれるわけないと断念

 

――大学に行きたかったんですね。

 行きたかったですね。これがやりたいという具体的なものもなかったけれど、たぶん「大学生」になりたかったんです。戻る家もないし貯金もないので大学なんて行けるわけがないのに。

 でもさすがに就職が決まらないとヤバいなと思い始めた高3の冬に、もう一度職員さんがここを紹介してくれて。それで面接をして、12週間後には実習を始めて、卒業した4月から入社しました。

 

――それまで、やりたい仕事や夢などありましたか?

 義母が開いたペットショップでトリマーの仕事を見て興味を持ったことが。でも「いずれあなたがこの店を背負うのよ」なんて言われてから、トリマーは嫌になってしまいました。

 それ以外に、消防士や警察官、看護師にも憧れました。でも消防士は高所恐怖症だからできないと思ったし、『13歳のハローワーク』という本を読んだら、警察官も厳しい訓練が6ヶ月も続くとあって耐えられなさそうだ、看護師も数学ができないと無理だろう、芸能マネージャーも大学卒業がほとんどとあって、無理じゃんと。そうしたら本当にやりたいことがなくなっちゃって。だから高校の担任にも、「大学に行きたいのに行けないし、やりたいこともないから就職しない」と言っていました。

 

――夢は叶わなかったけど不満はない?

 今でも消防士は憧れますけどテレビで厳しい訓練を見ると心が折れてしまうぐらいだし、たぶん夢は夢であって、本気ではないんでしょう。

 それに周りの環境のせいにもしてました。施設にいるから、大学に通えないから、選択肢が狭いから、って。振り返ると、高校も特に行きたいところがなくて担任に「ここがいいんじゃない?」と言われたところを受けてみたら受かっちゃったし、就職も紹介されてすぐに決まったりと、いつもなんとかなってきてしまったので、夢に向かって努力したことがなかった。

 だけど、みんなが紹介してくれた高校もバイトも、施設も、施設があった町も、この動物病院も、入ってしまえばそれはそれで楽しい。ポジティブに考えれば何でもポジティブになるんです(笑)。

 

●施設にいたから得られたこと

 

――施設にいてよかったことは?

 人との関わりが一般家庭の子たちよりはるかに多いことだと思います。普通の家庭だと親が2人しかいないけど、こちらは何十人も大人がいるから話し相手も選べる。高3の時は、携帯代も自分で全部払うとか、門限で早く帰らなきゃいけないとかでちょっとグレて施設のせいにしてましたけど、「友だち以上、家族未満」の友だちも多くできるし、年の近い職員とはいつもケンカばかりしてたけど、基本は好きです(笑)。

 

――施設にいる子たちに伝えておきたいことは?

 施設の職員さんたちがいなきゃ私たちの生活も成り立たないし、彼らに感謝してほしいかな。自分が働いてから思ったんですけど、職員さんたちって、プライベートが全然ないんですよ。反抗期みたいな子どもばっかり相手にしてて、ストレスだって溜まる。自分はできなかったけど、みんな職員さんに優しくしてあげてほしいなって思います(笑)。本当に子どもが好きじゃないとやってられない仕事だし、なんだかんだとみんないい人たちなんで!

 

※この他施設入所時の話や高校時代の話など、全文は賛助会員会報誌「エール」に掲載しています。